なぜトレーニングで怪我をするのか
筋力トレーニングで怪我をする原因の多くは、「関節への過度な負荷」です。
しかし、同じ重量を扱っても、怪我をする人としない人がいます。この違いは何でしょうか?
答えは、「関節角度」と「トルク」の関係を理解しているかどうかにあります。
基礎知識:トルクとは?
トルク=回転させる力
物理学でいう「トルク」とは、物体を回転させようとする力のことです。
人間の体で考えると、関節を中心に「骨が回転する力」がトルクです。
トルクの計算式
トルク = 力 × 距離(モーメントアーム)
ここでいう「距離」とは、関節の回転軸から、力が作用する点までの垂直距離です。
実例:アームカール
アームカールを例に考えてみましょう。
肘を90度に曲げた状態(前腕が地面と水平)と、肘を伸ばした状態(前腕が地面と垂直)。
同じ10kgのダンベルを持っていても、肘にかかるトルクは全く異なります。
これが「同じ重量でも、角度によって負荷が変わる」理由です。
怪我が起きやすい「危険な角度」
肩関節:90度以上の外転
肩を横に90度以上上げた状態(外転90度以上)で負荷をかけると、肩峰下インピンジメントのリスクが高まります。
危険な例:
安全な対策:
膝関節:深すぎるスクワット(条件付き)
「フルスクワットは膝に悪い」という誤解がありますが、これは一概には言えません。
問題となるのは:
これらが起きると、膝蓋靭帯や半月板への負担が増加します。
安全な対策:
腰椎:屈曲位での高負荷
腰が丸まった状態(腰椎屈曲位)で高負荷をかけると、椎間板ヘルニアのリスクが高まります。
危険な例:
安全な対策:
安全なトレーニングのための3原則
原則1:可動域は「関節が安全な範囲」で
「フルレンジ(最大可動域)でないと効果がない」という考えは、修正が必要です。
正しくは:
原則2:モーメントアームを理解する
種目ごとに、「どの角度で負荷が最大になるか」を理解しましょう。
負荷が最大になる角度では:
原則3:ウォームアップで関節を準備する
冷えた関節は、潤滑液(滑液)の粘度が高く、動きが悪い状態です。
効果的なウォームアップ:
これにより、関節の動きがスムーズになり、怪我のリスクが低下します。
実践:種目別の注意点
ベンチプレス
危険ポイント:
安全対策:
スクワット
危険ポイント:
安全対策:
デッドリフト
危険ポイント:
安全対策:
「痛み」と「張り」の違いを知る
良い「張り」
トレーニング後に感じる、筋肉全体が張るような感覚。これは正常な反応です。
悪い「痛み」
以下の場合は、怪我のサインです:
「張り」と「痛み」を区別できることが、怪我予防の第一歩です。
まとめ
怪我を防ぐためには、「なぜその動きが危険なのか」を物理学的に理解することが重要です。
3つの原則:
「なんとなく痛い」を放置せず、痛みの原因を理解して、安全なトレーニングを続けましょう。