怪我予防10分

怪我を防ぐ運動物理学 — 関節角度とトルクの関係を理解する

「なんとなく痛い」を放置していませんか?関節にかかる負荷の原理を知れば、怪我のリスクを大幅に減らせます。

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Fiterre編集部

2026-01-22

なぜトレーニングで怪我をするのか

筋力トレーニングで怪我をする原因の多くは、「関節への過度な負荷」です。

しかし、同じ重量を扱っても、怪我をする人としない人がいます。この違いは何でしょうか?

答えは、「関節角度」と「トルク」の関係を理解しているかどうかにあります。


基礎知識:トルクとは?

トルク=回転させる力

物理学でいう「トルク」とは、物体を回転させようとする力のことです。

人間の体で考えると、関節を中心に「骨が回転する力」がトルクです。

トルクの計算式

トルク = 力 × 距離(モーメントアーム)

ここでいう「距離」とは、関節の回転軸から、力が作用する点までの垂直距離です。

実例:アームカール

アームカールを例に考えてみましょう。

肘を90度に曲げた状態(前腕が地面と水平)と、肘を伸ばした状態(前腕が地面と垂直)。

同じ10kgのダンベルを持っていても、肘にかかるトルクは全く異なります

  • 90度の時:トルク最大(モーメントアームが最大)
  • 0度または180度の時:トルク最小(モーメントアームがほぼゼロ)
  • これが「同じ重量でも、角度によって負荷が変わる」理由です。


    怪我が起きやすい「危険な角度」

    肩関節:90度以上の外転

    肩を横に90度以上上げた状態(外転90度以上)で負荷をかけると、肩峰下インピンジメントのリスクが高まります。

    危険な例:

  • サイドレイズを肩より高く上げる
  • ワイドグリップでのアップライトロウ
  • 安全な対策:

  • サイドレイズは肩の高さまで
  • アップライトロウは肘を肩より低く保つ
  • 膝関節:深すぎるスクワット(条件付き)

    「フルスクワットは膝に悪い」という誤解がありますが、これは一概には言えません。

    問題となるのは:

  • 膝が内側に入る(ニーイン)
  • 膝がつま先より大きく前に出る(過度な前方移動)
  • 荷重が前足部に偏る
  • これらが起きると、膝蓋靭帯や半月板への負担が増加します。

    安全な対策:

  • 膝はつま先と同じ方向を向ける
  • 足裏全体で地面を捉える
  • 適切な足幅とつま先の角度を見つける
  • 腰椎:屈曲位での高負荷

    腰が丸まった状態(腰椎屈曲位)で高負荷をかけると、椎間板ヘルニアのリスクが高まります。

    危険な例:

  • 背中を丸めたデッドリフト
  • 腰を丸めた状態でのシーテッドロウ
  • 安全な対策:

  • 常に「胸を張る」意識を持つ
  • 腹圧をしっかりかける(ブレーシング)
  • 可動域は、腰椎がニュートラルを保てる範囲まで

  • 安全なトレーニングのための3原則

    原則1:可動域は「関節が安全な範囲」で

    「フルレンジ(最大可動域)でないと効果がない」という考えは、修正が必要です。

    正しくは:

  • 関節がニュートラルまたは安全なアライメントを保てる範囲で動かす
  • 「ストレッチ感」と「痛み」を区別する
  • 無理に可動域を広げない
  • 原則2:モーメントアームを理解する

    種目ごとに、「どの角度で負荷が最大になるか」を理解しましょう。

    負荷が最大になる角度では:

  • スピードを落とす(慣性を使わない)
  • コントロールを意識する
  • 無理な重量を扱わない
  • 原則3:ウォームアップで関節を準備する

    冷えた関節は、潤滑液(滑液)の粘度が高く、動きが悪い状態です。

    効果的なウォームアップ:

  • 軽い有酸素運動(5分程度)
  • ダイナミックストレッチ
  • 軽重量でのウォームアップセット
  • これにより、関節の動きがスムーズになり、怪我のリスクが低下します。


    実践:種目別の注意点

    ベンチプレス

    危険ポイント:

  • 肩関節の過度な水平伸展(バーを胸まで下ろしすぎ)
  • 肩甲骨が固定されていない
  • 安全対策:

  • 肩甲骨を寄せて固定する
  • 肘の角度は45〜75度程度
  • バーの下降位置は乳首ライン付近
  • スクワット

    危険ポイント:

  • 膝のニーイン
  • 腰椎の過度な屈曲(バットウインク)
  • 安全対策:

  • 膝は常につま先の方向へ
  • 深さは腰椎がニュートラルを保てる範囲まで
  • 股関節の可動域を事前にチェック
  • デッドリフト

    危険ポイント:

  • 腰椎の屈曲
  • バーが体から離れる
  • 安全対策:

  • 胸を張り、背中をフラットに保つ
  • バーは常にスネ〜太ももに沿わせる
  • 無理な重量に挑戦しない

  • 「痛み」と「張り」の違いを知る

    良い「張り」

    トレーニング後に感じる、筋肉全体が張るような感覚。これは正常な反応です。

    悪い「痛み」

    以下の場合は、怪我のサインです:

  • 関節に鋭い痛みがある
  • 特定の動作で痛みが再現する
  • 動かなくても痛い
  • 腫れや熱感がある
  • 「張り」と「痛み」を区別できることが、怪我予防の第一歩です。


    まとめ

    怪我を防ぐためには、「なぜその動きが危険なのか」を物理学的に理解することが重要です。

    3つの原則:

  • 可動域は関節が安全な範囲で
  • モーメントアームを理解する
  • ウォームアップで関節を準備する
  • 「なんとなく痛い」を放置せず、痛みの原因を理解して、安全なトレーニングを続けましょう。

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    Fiterre編集部

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